2017-08-12

証券投資を記録する。(2)

1期ごとの損益と元本異動を記録する損益及び資本変動計算書は以下のように定義する。

損益及び資本変動計算書

行の定義は貸借対照表と同じで、1行が1期(3ヶ月)を表す。
以下、列の定義。
  1. 資本変動合計
    • ネット・トータルリターンと資本取引の合計を資本変動と呼ぶ。信用取引に伴う負債増減と元本の出し入れによる資本金増減を合計して資本取引と呼ぶ。
    1. ネット・トータルリターン
      • 評価損益・譲渡損益・配当・税金(マイナス)の合計をネット・トータルリターンという。
      1. 評価損益及び譲渡損益
        • 評価額変動による損益。私の基準では、含み損益と反対売買(購入なら売却、空売りなら買い戻し)を行って確定した譲渡損益を区別せず一つの項目とする。ただし譲渡益に対する税金は記録する。
        • この項目は従属変数であり、値の記入は不要。
        • 「(今期の利益剰余金-前期の利益剰余金)-(今期の配当+税金)」という式を書いておく。
      2. 税引前配当
        • 独立変数。自分が使っている証券会社から転記する。
        • その期中に受け取った配当。
      3. 配当所得税
        • 独立変数。自分が使っている証券会社から転記する。
        • 配当にかかる所得税。今の日本では15.315%。
      4. 配当地方税
        • 独立変数。自分が使っている証券会社から転記する。
        • 配当にかかる地方税。今の日本では5%。
      5. 譲渡益所得税
        • 独立変数。自分が使っている証券会社から転記する。
        • 譲渡益にかかる所得税。今の日本では15.315%。
      6. 譲渡益地方税
        • 独立変数。自分が使っている証券会社から転記する。
        • 譲渡益にかかる地方税。今の日本では5%。
    2. 資本取引合計
      • 信用取引に伴う負債増減と元本の出し入れによる資本金増減を合わせて資本取引と呼ぶ。
      1. 負債増減
        • 独立変数。「自分がどれだけ証券会社から借り入れを行ったか」を記入する。
        • 期中に行った信用取引に伴う負債の増減。信用取引を行っていない場合、使わない項目である。
      2. 資本金増減
        • 期中に行った元本異動。
        • この項目は、独立変数・従属変数どちらにしてもよい。
        • 独立変数にする場合、投入・引き出し金額を直接書くだけでよい。
        • 従属変数にする場合、「いつ、どれだけ元本異動を行ったか」という履歴を書くシートを用意し、その履歴を引数としてSUMIFS関数を使って資本金増減を集計する。詳細は後述。
上記の定義で損益及び資本変動計算書を作成すると、以下のような感じで出来上がる。
サンプル

貸借対照表と並べるとこうなる。

見本上、上記シートは「有価証券」という名前である。
貸借対照表と同様、
  • 独立変数
    • 単純に値を持つ項目。見本上は見出しが太字。
  • 従属変数
    • 他の項目を参照及び計算して値が決まる項目。
の2つがある。


補足:資本金増減を従属変数にし、元本異動履歴を別シートで管理する場合

見本では資本金増減が従属変数になっているが、これは元本異動の履歴を以下のように別のシートで管理し、それを参照して値を求めているためである。

(「確定拠出年金の拠出」と「証券投資目的現金振替」は名前が違うだけで投資の追加である点では同じである。)
「いつ(YYYY-MM-DD)どれだけ(JPY)元本異動を行ったか」を上記の要領で記録し、SUMIFS関数を使って合計する。

たとえば、2017-05-01に1,000,000円元本を追加したとする。

この場合は、この元本異動の履歴を示すシート(見本上は「収支明細」という名前)に
【2017-05-01 証券投資目的現金振替 2 -1,000,000】 
と記入する。
(マイナスであるのは、投資追加のキャッシュフローはマイナスであるため。引き出しならプラス。)

損益及び資本変動計算書の資本金増減のセルには以下のような数式を書く。
=-SUMIFS(
    元本異動履歴シート.金額列の全行(合計範囲指定),
    元本異動履歴シート.勘定科目ID列の全行,(条件1範囲指定)
    集計したい勘定科目ID(例では1または2)(条件1),
    元本異動履歴シート.異動年月日列の全行(条件2範囲指定),
    財務諸表シート.前期末年月日&"<"(条件2),
    元本異動履歴シート.異動年月日列の全行(条件3範囲指定),
    財務諸表シート.今期末年月日&">="(条件3)    
)
最初の引数で合計対象となる金額が書かれた列を指定する。
条件1で勘定科目を判断し、資本金増減に関わっていること判定する。
条件2と3で、どの期に当たるかを判定する。

すると異動年月日がどの期に当たるかをSUMIFS関数が判断し、2017年第二四半期(4月1日~6月末)の資本金増減が+1,000,000となり、資本金がそれだけ増える。

元本異動の管理は以上のようにして行う。
(もちろん、「資本金増減」項目を独立変数にして、直接値を記入してもよい。その場合は「その期中に行った元本異動の純額」が記録されることになり、それ以上詳細な履歴は残らない。)

ちなみに、投資と、それ以外の生活を総合した家計簿自体の仕組みも今まで説明してきた証券投資用財務諸表と大差ないので、それも合わせて今後説明していこうと思う。

以上、「証券投資を記録する。(1)~(2)」により、残高・損益・元本異動・累積損益(パフォーマンス)の記録ができる。

予告:(3)以降で説明するもの

  • ポートフォリオ(保有銘柄)の内訳とその推移の記録
  • 銘柄の属性(銘柄コード、価格、会社名、業種、一株配当、予想成長率等多数)情報の管理
  • ポートフォリオの業種比率とその推移の記録
  • ポートフォリオの加重平均特性(配当利回り、予想成長率等)とその推移の記録
  • (1)~(2)で説明してきた財務諸表の仕組みを応用した家計簿

証券投資を記録する。(1)

証券投資の

  • 残高
  • 損益
  • 元本異動

を記録するため、以下のようなブック(表計算ファイル)を作成する。
残高貸借対照表に、
損益元本異動損益及び資本変動計算書に記録する。

貸借対照表
  • 行の定義
    1. 決算期
      • 3ヶ月を1期とし、1行の記録とする。
  • 列の定義
    1. 資産合計
      1. 証券口座内現金
        • 独立変数。自分の証券会社から転記する。
        • 文字通り、証券口座内にある現金とその等価物(MMF,MRF等)
      2. 証券時価総額
        • 独立変数。自分の証券会社から転記する。
        • 買い付けた株式・債券・投資信託の合計時価
      3. 確定拠出年金残高
        • 独立変数。自分の証券会社から転記する。
        • 自分が加入者であり、証券投資の一環として管理したい場合
      4. その他証券口座内資産
        • 独立変数。自分の証券会社から転記する。
        • 上記のいづれでもない証券口座内資産。もしあれば書く。
    2. 負債と純資産合計
      1. 負債
        • 従属変数。(2)で説明する損益及び資本変動計算書の負債増減の累計額。
        • 証券投資の一環としての負債、つまり信用取引に伴う借り入れ。
      2. 純資産
        1. 資本金
          • 従属変数。(2)で説明する損益及び資本変動計算書の資本金増減の累計額。
          • 元本の追加・引き出しの累計額。
        2. 利益剰余金
          • 従属変数。同じ期の「資産合計-(負債+資本金)」と計算して求める。
          • ネット・トータルリターン(詳細は(2)で解説)の累計額
項目には独立変数と従属変数の2種類がある。
  • 独立変数
    • 単純に値を持つ項目。見本上は見出しが太字。
  • 従属変数
    • 他の項目を参照及び計算して値が決まる項目。
列の各項目は、「同じ階層の項目の値の合計=一つ上の階層の項目の値」という関係にある。
(資本金+利益剰余金=純資産 かつ 純資産+負債=負債と純資産合計、という感じ)
上記の定義で貸借対照表を作成すると、以下のような感じで出来上がる。
サンプル

列の項目のうち、上記の見本で見出しが太字になっている項目に、値を直接記入していく。
太字でない項目は、他の項目を参照して計算することで求められる。
(資産合計=1階層下の内訳の合計、という感じ)
負債と純資産の部は、資産の部と、次に説明する損益及び資本変動計算書に記入された値を参照・計算して求められる。

2017-08-08

投資家は投資先と同様に財務諸表を作成すべきである

株式投資を行うなら、投資先企業のように投資家自身も理にかなった財務諸表を作成しなければならない。

投資ノウハウを示す本は世の中に沢山あるが、
「投資家は、自分の投資活動をどのように記録すべきか」
について解説した本は殆どないのではないだろうか。

記録の基本はこうである。
  1. 証券投資を事業内容とする(理論上の)法人を作る(所有者はもちろん自分)
  2. その法人の財務諸表を作る
財務諸表とは以下の3つ(数え方によっては4つ)のドキュメントを指す。

  • 貸借対照表
  • 損益及び資本変動計算書
  • キャッシュフロー計算書
そのようにイメージして表計算ソフトを使い管理してゆく。
私はLibreOffice Calcを使用しているので、それを使って解説してゆく。

証券投資のストックとフローを理論上の法人と考えることには、

  • 証券を、投資と無関係なストック(預金、車等)と区別する
  • 証券取引や証券の配当を、投資と無関係なフロー(給料、生活費等)と区別する
  • 本質的、実務的にも証券投資は法人化可能な事業である。個別銘柄を選んで買うという事は、自分専用の投資信託を作っているともいえる。世の中に色々ある投資信託も、その実体はSPC等の法人である。(Special Purpose Company,特別目的会社) そのため個人としてやり始めた頃から法人だと思って管理したほうが理にかなっている。


といった利点がある。

2017-08-04

資本主義・市場経済の成長は永続する

ジョン・バー・ウィリアムスは永久に成長する会社はないと考えた。繁殖する細菌の個体数成長率の説明であるロジスティック成長が、経済成長にも当てはまると考えからである。
水野和夫は成長率が0%となって資本主義は終焉すると考えた。

私は「投資単位(殆どの場合、一株)あたりの企業価値は、永久に、確実に成長する」という立場に立つ。
細菌の需要は養分だけである。満腹となったところでそれ以上は求めない。
しかし人間の需要や欲望は、名目貨幣を尺度にして図る限り、無限大である。
それゆえ私は経済成長には限りがないと思う。

また、総額ではなく投資単位あたりでいえば、成長を続けるであろうというより強い確信がある。
会社は余剰現金(フリーキャッシュ)を持つと、その現金で投資単位(株式や債券)の買い戻しを行い、成長率の分母を減らすことができる。そのため会社は一定の利益を稼ぎつつ、自社株買いによって株式数を減らしてゆくと、規模は成長しないのに一株あたりの価値は成長する、という事を実現できる。

 仮に規模の成長率が0%になったとしても、成長率0%の資本主義も、資本主義であることには変わりがなく、終わること無く続くのではないかと思う。ただ、「成長率0%の資本主義」は、「流動性の高い封建主義」と言えるのではないか、と私は考えている。資本主義の前段階として封建主義や重商主義が存在したわけだから、これら資本主義以外の経済システムの研究も、資本主義経済の中で有利な証券投資を実践していこうと思うならば必要である。

 経済の総額の成長は難しく、投資単位あたりの企業価値成長はらくである。というのが私の見解である。これは、ピケティが示したg<r(経済成長率<資本利益率)と同じことを示している。

経済成長率gと資本利益率rの組み合わせは

  • 0=g=r 文明以前、狩猟経済、野生動物の世界。
  • 0<g<r 資本主義の法則。私はこれが永続すると思う。
  • 0<g=r ソローの黄金率。達成されると消費が最大化する。
  • 0=g<r g=0の資本主義。水野氏の予想が当たると未来はこうなる。
  • 0<r<g 2次大戦後の高度成長期。資本利益率以上に経済が拡大した期間。

高度成長期という短期間であったが、資本利益率以上の経済成長が何故可能なのか?は労働者と資本家の両方が豊かさを得るための鍵である。労働生産性の成長が、労働者と資本家の双方に豊かさをもたらす。労働生産性を成長させ続ける会社が、価値の高い会社であるといえるため、これについてはより深い研究が必要であると感じている。

私の見解

投資はあらゆる学問を横断する総合科学である。研究成果は所得になり、所得の積み重ねは資産になる。

  • ベンジャミン・グレアムの証券分析
  • ジョン・バー・ウィリアムスの投資価値理論
  • マッキンゼー・アンド・カンパニー(法人)の企業価値評価
  • アダム・スミス、ケインズ、ハイエク、マルクスらの経済学
  • ルーエンバーガーらの金融工学
を渉猟した結果たどり着いた見解が・・・

  • 配当利回りと配当成長率の合計が、株主にとっての予想利益率である。
  • 無配の会社は、一株当たり利益の成長率が株主にとっての予想利益率である。
  • ROIC(Return On Invested Capital、投下資本利益率)は高いほどよい。
  • 自己資本比率の低い会社が質の低い会社であるとはいえない。出資と融資の区別を無くして求めたWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)の低い会社が、質の高い会社である。
  • ROICからWACCを差し引いた残りが、証券投資家から見たその会社の存在意義である。
  • 他の要素が同じならは、設備投資は少ないほどよい。なぜなら設備投資はその会社が発行する証券を持つ証券投資家にとって費用だからである。
  • 人気のない会社は値下がりし、利回りが高くなる。利回りが高くなると投資利益率が高くなる。したがって証券投資家は、少ない設備投資で多くの利益を生んでいるが人気がない、という会社の株を好んで買うべきである。例えばタバコ会社。
  • 割引率の変化は予知不可能である。割引率の変化を源泉とする利益は持続可能でない。
  • 労働者の所得は、彼自身の労働が生み出す付加価値よりも必ず少ない。そうでなければ事業主の利潤は生まれない。付加価値から労働者所得を差し引いた残り(マルクスがいう剰余価値)の割引現在価値が、企業価値である。労働が生み出した価値の全額が給料になるわけではない、という法則を知らない人は多い。
  • 剰余価値を求めて株を買う投資家は、マルクスがいう資本家である。本当の富はここにある。

2017-08-03

シーゲル先生の著書

ペンシルヴァニア大学ウォートン校の教授、ジェレミー・シーゲル先生は株式投資について大きな影響力を持つ本を書いています。シーゲル先生と同じ立場に立つ人々をシーゲル派といいます。おそらく私もその一人です。ですが実はシーゲル先生の本はまだ読んでいません。興味はあるのでこれから読んで役立てようと思います。読まずとも、近い結論に至っていることに重要な意味を感じています。市場経済や資本主義は、生態系のようなものであるため、研究を続ければ同じ結論に至るということだと思います。

2017-07-30

参考文献

私が読んできた投資関連本の一覧です。

『題名』著者(出版社)

企業・証券の評価系

  1. 『証券分析』ベンジャミン・グレアム&デビッド・ドッド(パンローリング)
  2. 『投資価値理論』ジョン・バー・ウィリアムス(パンローリング)
  3. 『バリュー投資の強化書』角山智(パンローリング)
  4. 『バリュー株投資は「勝者のゲーム」!』井出正介(日経新聞出版)
  5. 『企業価値評価の考え方と実践がよ~く分かる本』笠原真人(秀和システム)
  6. 『企業価値評価』マッキンゼー・アンド・カンパニー(ダイヤモンド)
インデックス投資系
  1. 『敗者のゲーム』チャールズ・エリス(日経新聞出版)
  2. 『ウォール街のランダム・ウォーカー』バートン・マルキール(日経新聞出版)
学術系(経済学)
  1. 『雇用・利子・お金の一般理論』ジョン・メイナード・ケインズ(講談社)
  2. 『21世紀の資本』トマ・ピケティ(みすず書房)
  3. 『マクロ経済学』ジョセフ・スティグリッツ、カール・ウォルシュ(東洋経済)
  4. 『ミクロ経済学』ジョセフ・スティグリッツ、カール・ウォルシュ(東洋経済)
  5. 『経済成長の理論』ジョセフ・シュムペーター(岩波書店)
  6. 『国富論』アダム・スミス(日経新聞出版)
学術系(金融工学)
  1. 『金融工学』デービッド・ルーエンバーガー(日経新聞出版)
その他多数